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産業としてのクレジット

クレジットは特定の業界だけが提供しているのではなく、販売店が自社割賦を行っている場合も含めて取り扱いの裾野は広く、業として行う貸金業者よりも相当幅広いものとなっています。販売店も現在では、第三者機関が提供するクレジットを使う方がリスクもなく、現金化も早いために面倒な自社割賦を行うところは少なくなっていますが、簿記の教科書に割賦販売の処理が載っているぐらいですから、やろうと思えばいつでもできます。専業として最後まで残っていたのは月賦百貨店という業態でしたが、この業態は言葉自体が死語化しています。現在は大規模業者で自社割賦を扱うところはなく、媒介機関としてのクレジットカード会社や信販会社等が主流となっています。

それらの企業は独立系の場合もありますが、ほとんどは金融機関の系列に入っています。大量の売掛金を抱えるクレジットは、資金の手当てができないとビジネスになりませんから、当然といえば当然です。また大量の顧客を抱える大手小売業は、ほとんどが子会社としてクレジット会社を設立してクレジットカードを発行しています。このように多くの業態が取り扱うクレジットを、産業というかどうかはなかなか悩ましい問題です。消費者に与信するという意味では金融の一形態ですし、販売との密接な関係を中心に見ることができる業界ではサービス業の一種です。

そのどちらでもない、というのが答えになると思いますが、かといって独立した産業体というほどのものではありません。もしクレジットを産業として見るのであれば、その産業規模を示すなんらかの指標が必要になります。金融取引の指標は与信の残高です。クレジットの場合は残高も使いますが、メインとしているのは売上高です。新規信用供与額という当該期中に与信したすべてを指標としています。身近な例でいうと、クレジットカードの翌月一括払い(マンスリークリア)を使って公共料金の支払いをしていると、毎月の請求分の合計(一二ヵ月分)が新規信用供与額となります。

公共料金や税金は、以前は金融機関が自動引き落としをしていた領域ですが、最近ではクレジットカードで決済することができます。これらのものまで売上高といってしまうと、途方もない金額になります。統計上も、わが国小売業の代表格である百貨店やスーパーが軒並み売上高前年比を下回る昨今の状況下でも、クレジットカードは独り勝ちのように伸びています。消費者の決済や支出の平準化のためにあるクレジットだけが突出して成長しているのは、いささか解せないところです。

ですからクレジットはあくまでも社会においては黒子の存在で、消費者が求める決済や支出の平準化機能を裏方で提供している業界としておくべきです。クレジットなしでは生活できないほど社会の必要性は高いとはいっても、それだけで生活ができるわけはないからです。ただし、クレジットをうまく使うと需要を喚起できることは間違いありません。この機能をいたずらに減殺するのは、資源の有効活用という意味でもったいないことだと思います。